78頁目 「ノスタルジー」より

 

覚えてるよ。

 

幼かったね。わたし。

 

死にかけて。

 

幼かったね。わたし。

 

男女の区別すらわからなくて。

 

幼かったね。わたし。

 

男に囲まれたね。家で。

見張りまでつけられてさ。

 

幼かったね。わたし。

 

下着を触られた。道端で、見たくないものを、見せられた。

 

幼かったね。わたし。

 

服脱げとも言われた。

今からやるって言われた。

 

怖かったね。わたし。

 

拒否すれば良いのに強がってさ。

何度も。何度も来やがって。

 

辛かったね。わたし。

 

誰にも言えなくてさ。嘘と本当を混ぜて吐露して。それでも全て、言えなくて。

 

苦しかったね。わたし。

 

醜ければ、よってこないって、自分の身体に傷痕残してさ。

 

痛かったね。わたし。

 

死にたくて。忘れたくて。逃げたくて。

 

どうしようもないね。わたし。

 

だって、信じれないものね。

人間って、救えないの。

 

助けれないね。わたし。

 

醜いままで良いよ。

 

 

ずっと、ひとりがいいね。

 

 

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トラウマ。

フラッシュバック。

少しずつ、少しずつ。

なんとかやって。

少しずつ、夢は遠ざかって。

少しずつ、現実的な生き方で。

 

ああ。どうか。

 

お金。お金が必要だ。

なんて、めんどくさい。

全然、稼げない。

 

自由?そうじゃない。できない。

ひと。ひと。結局ひと。

 

嫌われたくない。見放されたくない。

恥ずかしくなりたくない。

傷付きたくない。

 

 

いっぱい、いたかった。

 

今でも、自己嫌悪。

ずっと、後悔。

馬鹿だった。愚かだった。

 

ありがとうと、いえるように。

すなおに、なれるように。

ごめんなさいと、いえるように。

 

少しずつ、少しずつ。

 

自分をなんとか変えていこうと。

 

あの時の自分を償うために。

これからの自分が思い通り死ねるように。

 

少しずつ、少しずつ。

諦めて、妥協して。

 

絶対に、子供をつくらない。

その子が苦しくないように。

 

絶対に、結婚はしない。

その人が、幸せになれるように。

 

絶対に、家はもたない。

解体で人の手を煩わせないように。

 

絶対に、墓はつくらない。

死後も迷惑がかからないように。

 

消えたいと、逃げたいと、死にたいと、なにもしたくないと、望んだ自分のために。

 

 

どうか、消える命であってください。

どうか、少しの痕だけでいい。

どうか、迷惑ばかりかけて。

 

ただの、役立たずで馬鹿であってほしい。

それでも、生きれた世の中であってほしい。

 

どうか、どうか。

 

そんな甘い社会が、腐ってゆく様を。

 

どうか。

 

ひとりになれるように。

 

 

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