63頁目 「ノスタルジー」より

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死のうと思った事があった。

死ねれると思うことがあった。

 

嫌な事ばかりだった。

自業自得ばかりだった。

締まりなんか無かった。

後味が悪い事ばかりだった。

 

言葉に、詰まった。

 

 

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普通に、死ぬのでしょうか。

 

夢も、追い続けたまま。

 

中途半端で。

 

苦しんで死ぬのでしょうか。

 

息が、心臓が、ゆっくりと止まっていくのを実感しながら。

 

置いて、いかれるのでしょうか。

 

結局は、役立たずでしたか。

 

 

 

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ふと思い出す。

 

母の仕事先。ーーーーで接客してた母。

ひとり、時間つぶしで描いた絵。

いつも通り、ひとりだった子供。

声を掛けられた。いつもの事。青年だった。多分、ーーーーのお客さん。

「お母さんを待ってるの」

そんな事を、言ったっけか。

「あの女性?」

そう、指先にいる、ガラス越しで働いてるお母さん。肯定する。

白い紙と鉛筆が出てきた。

お兄さんが持ってた。元々あった?

静かに、描いてく。すらすらと。

紙に削られる芯の音。

母に似た女性が出来た。

凄いって言った。

貰ったっけ?スケッチブックだからそのまま閉じちゃったっけ?どこいったっけ?

憶えてるのは、絵が上手かった事。

私もやってみたいと思ったきっかけだったこと。

 

なんで、今。

思い出す?忘れちゃうの?絵が、好きだよ。絵に、恋してるんだよ。離れないで。絵のために、働いてるんだ。お願い。絵だけは取らないで。私の唯一無二の、きっかけなの。きっと、私は絵で生きてきた。絵で、救われたんだ。趣味はそこからはじまったんだよ。道を示したのは。火が灯ったのは、あの人のおかげなんだ。

手放したくはないんだ。

 

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ほんとうに、手放したくは、なかったんだ。